ライナーノーツ

あの微笑みを忘れないで

作詞:坂井泉水 作曲:川島だりあ 編曲:明石昌夫
(3rd AL『HOLD ME』収録)1992.9.2

ロック・バンドFEEL SO BADのヴォーカリスト川島だりあさん作曲ですが、彼女の提供してくれた中ではもっともポップで明るく爽やかな曲に仕上がっていると思います。 それはアカペラのコーラスで始まる印象が強いのかもしれません。2004年の全国ツアー“What a beautiful moment Tour”でも頭のコーラスを楽しめました。 なおかつ明石昌夫さんアレンジのtrackはギターを始め、全編あくまでもロックになっています。歌詞は、主人公が自分自身を勇気付けようと自問自答してるのですが、 無事に失恋の悲しさを吹っ切って、新しい明日に向かっていく様は、この曲の持つメロディ、trackにぴったりです。また“電話”“口笛”など聴覚、“レンガ色”など視覚、 “ぬるいコーラ”など味覚、“風を感じて”など触覚……。いわゆる五感をフル稼働させて、歌詞の世界を伝えてくれています。

黄昏にMy Lonely Heart

作詞:坂井泉水 作曲:栗林誠一郎 編曲:明石昌夫
(10th Sg「きっと忘れない」c/w)1993.11.3

この曲は一転して、失恋した自分に言い聞かせながらも、まだ完全に吹っ切れていない主人公を描いています。 栗林誠一郎さんの書くメジャー・コードでもマイナー・コードでもない曲調が、こういう内容の歌詞を坂井さんに書かせたのでしょうか。 Trackは、ZARDには少ない跳ねたビートになっています。歌のメロディもサビの頭が跳ねていて、実に軽快です。楽しい雰囲気の中、坂井さんの歌は、 比較的さらりと揺れ動く心を表現しています。このToo Muchでない感じがZARDの特徴の1つなのではないでしょうか?感情を込め過ぎて過剰に“悲しい” “辛い”というよりも、さらりと歌ってくれた方が、かえってずっしりと伝わるのではないでしょうか?主人公も自らに向かってつぶやいています。 “これで本当によかったと 言いきかせた”と。

愛が見えない

作詞:坂井泉水 作曲:小澤正澄 編曲:葉山たけし
(15th Sg)1995.6.5

小澤正澄さん提供の作品。アレンジは葉山たけしさんです。今もそうですが、この曲をリリースした95年の葉山さんのtrackは、 次曲の「サヨナラは今もこの胸に居ます」も含め、とても多面性を見せてくれていて、我々スタッフも仕上がりを楽しみにしていました。 ハードなロックで疾走感溢れていて、デビュー前に実はアン・ルイスの歌を得意としていた坂井さんにもぴったりで、ZARDのもっともワイルドな作品の1つになりました。 歌詞は具体的なエピソード満載ですが、聴き手がその世界に入り込む、というよりかは、それぞれ好きな様に想像出来る内容になっています。 このあたりもZARDに普遍性のある理由でしょう。Bメロはとても早口な歌詞になっていますが、ラップではなく、伝えたい事をリズミカルに歌った印象です。 当時すでにラップがヒット・チャートを席巻していましたが、そのまま取り入れなかったところが坂井さんらしいです。

サヨナラは今もこの胸に居ます

作詞:坂井泉水 作曲:栗林誠一郎 編曲:葉山たけし
(16th Sg)1995.8.28

栗林さんの提供作品。サビの栗林さん本人によるコーラスも胸にじーんときますし、出来上がりも、メロディ・センスを生かした、切ない物語になっています。 イントロのブルース感覚溢れたギターも色を添えています。しかしパッと聴きは、あくまで爽やかな味わいで、そこがまさしく前述した様に、ZARDの特徴だと思います。 爽やかなメロディとtrackだからこそ、切ない歌詞にしたり、切ない内容だからこそさらりと歌ったり、またエピソードが具体的だとしても独りよがりにならず普遍的だったり。 言い換えれば、“隙”があるわけです。坂井さんの歌詞と歌に自然な説得力があるお陰でしょう。ZARDプログラムは、試行錯誤して作品を作り続けていますが、 緻密な仕上がりではなく、聴いて“ああ良いなあ”というものを目指しています。

ひとりが好き

作詞:坂井泉水 作曲:栗林誠一郎 編曲:明石昌夫
(AL『もう探さない』収録)1991.12.25

歌詞カードを見ると、非常に少ない言葉数になってますが、曲は4分49秒あります。でもその長さを全く感じさせないです。trackに大きな変化があるわけでもなく、 メロディの種類が多く、めくるめく大展開をしているわけでもなく、特徴的なフレーズの言葉があるわけでもないのですが、最後まで飽きさせずに、聴いているうちに、 あっという間にエンディングになっています。まさに、メロディ、歌詞のマッチングが良く、そしてそれを歌う坂井さんにもぴったりだったという事でしょうか。 また坂井さんは他のヴォーカリストよりも、リズムが重めです。通常ドラムのスネアのビートが重めだと、気持ち良い場合が多いのですが、坂井さんの歌は、スネアも含め、 他のどの楽器よりもタイミングは後ろになっています。この“どっしり感”もZARDの音楽性の考察には必要な要素でしょう。

あなたに帰りたい

作詞:坂井泉水 作曲:栗林誠一郎 編曲:明石昌夫
(AL『OH MY LOVE』収録)1994.6.4

筆者は、今回ベスト・アルバムの原稿を依頼され、また9月に行われるライヴの音楽スタッフの1人として、 改めてZARDの曲を聴き返しました。6月の音楽葬にも行かせて頂き、無事献花も済ませてきましたが、やはり、色々な思いがあるせいか、 どうしても涙がこぼれてしまう事がありました。それがいつ訪れるか分かりませんでした。仕事中に泣いているのも変でしょうから、 誰もいないところに移動して聴いたり、夜中に原稿を書いたり、という進行でした。ようやく慣れてきましたが、未だに泣かずには聴けない曲があります。 それが「あなたに帰りたい」です。明確な理由は分かりません。もうイントロから、エンディングのストリングスのところまで、ずっと、です。ごめんなさい。

So Together

作詞:坂井泉水 作曲:川島だりあ 編曲:明石昌夫
(AL『HOLD ME』収録)1992.9.2

ウェディング・ソング的な内容の歌詞になっています。でも、切々としたものではなく、人生を切り開くぞ、 という決意がしっかりと伝わります。川島さんのメロディが持つ力強さと、パワー全開のギター・ワーク、そしてそれ以上に坂井さんの歌声も強力です。 話は変わりますが、デビュー前に坂井さんのスタジオでの歌入れに立ち会いましたが、よく通る響く声で驚きました。CDだけを聴いている皆さんには、 ちょっと分かりづらいかもしれませんが、まさに入魂という感じの歌い方です。だからこそ、さりげない表現だとしても、印象深く胸に残るのではないでしょうか? もし生身の坂井さんの歌声に触れたい場合は、2005年6月8日にリリースされたLIVE DVD「What a beautiful moment」を是非ご覧下さい。

遠い星を数えて

作詞:坂井泉水 作曲:栗林誠一郎 編曲:徳永暁人
(21st Sg「風が通り抜ける街へ」c/w)1997.7.2

坂井さんの描く主人公と相手役の中でも、代表的な人物像ではないでしょうか?聴き手が男性なら、そんな女性像を想像するかもしれませんし、 聴き手が女性なら、“あるある”という共感を覚えていたかもしれませんね。しっとりしたtrackに追っかけのコーラスがとても印象的で、音楽的にも共感を得やすい様に思います。 ZARDはシングルだけでなく、C/W曲やアルバム曲にも秀逸なものが多いですが、この曲もそんな中の1曲ではないでしょうか? 今回の2枚のアルバムのうち『Soffio di vento Best of IZUMI SAKAI Selection』の選曲は、2007年2月号のZARDのファン・クラブ会報誌「WEZARD」の中の企画で、 坂井さんが会員の方の為に13曲セレクトした、いわゆる空想上の“ベスト”盤が元になっています。コンセプトは特にない、と言いながらも、 “強いて言うなら『LOVE&POWER』”とコメントを残していました。坂井さんの思いをたどり、想像しながら、聴いてみるのもよいのではないでしょうか?

遠い日のNostalgia

作詞:坂井泉水 作曲:望月衛介 編曲:明石昌夫
(3rd AL『HOLD ME』収録)1992.9.2

B.B.Queensのキーボード、望月衛介さんの提供曲。坂井さんの歌声がしっかりと伝わりやすい、ミディアム・テンポでZARDらしい曲の1つだと思います。 もともと3rdアルバム『HOLD ME』に収録されていましたが、ベスト・アルバムに収録する際、サイズを短くして、2番の後のサビをつないでいて、 今回もそのヴァージョンを採用しました。今の移り行く時代の流れの早さから短くした、という事もありますし、より多くの曲を皆さんにお届けしたいと話し合った結果でもあります。 そこで、改めてZARDの各曲の長さを確認すると、案外長い事に気付きます。例えばテレビの音楽番組の場合、1チームあたりの持ち時間は3分、あるいは2分半など、 出演者はサイズを編集しているケースがほとんどです。ZARDは、あまりテレビに出演しなかったせいでしょうか?5分近い曲も少なくありません。

来年の夏も

作詞:坂井泉水 作曲:栗林誠一郎 編曲:明石昌夫
(AL『OH MY LOVE』収録)1994.6.4

明石昌夫さんのアレンジといえば、当時のビーイング・サウンドの立役者というイメージが強く、アレンジ内容もあらかじめ大体想像出来そうですが、 実際はとても幅広く多岐に渡った内容のものを仕上げています。この曲もそうです。1番はボサノヴァ気分で静かに始まり、2番は8ビートのロックで、間奏は前半がガット・ギター、 後半はサックス、その後のサビではドラムもハードになり、最後はラ・カンパネラを彷彿させるピアノをDIMENSIONの小野塚晃さんが弾いています。 まるで四季折々の雑木林の様に展開していて、坂井さんのイメージを十二分に表現したアレンジだと思います。歌詞は“同じ血液型同士って”“恋の予感は土曜日の映画館”等、 日常の具体的なシーンが数多く書いてありますが、やはり聴く人はそれぞれが自由に連想出来る“隙”があります。

かけがえのないもの

作詞:坂井泉水 作曲:大野愛果 編曲:小林哲
(38th Sg)2004.6.23

2004年の全国ツアー“What a beautiful moment Tour”の合間に制作されたシングルです。ZARDは毎回長い事時間をかけてデモのやりとりやレコーディングを行ない、 吟味を加えていく事が多いのですが、それに比べたらこの曲は、大変短い期間に完成出来たと思います。丁寧に作られた切なさ満載の小林哲さんのtrackに、 ツアー・メンバーだったギターの大賀好修(OOM)さん、同じくギターの綿貫正顕さん、ベースの麻井寛史(the☆tambourines)さんに、それぞれダビングしてもらい、 熱気溢れた仕上がりになりました。坂井さんもツアー中の為か、まるで第三の目が開いているかのごとくハイペースで歌詞を書き上げ、 歌入れをして、すぐにMIXをして完成させた様に思います。前述のツアーでは、最終日の日本武道館でのみ、披露しましたが、実はその前の名古屋と福岡のライヴの本番日の サウンド・チェックの時間にリハを行って、内容を確認して臨むという、意外に用意周到な段取りでした。

Boy

作詞:坂井泉水 作曲:栗林誠一郎 編曲:明石昌夫
(11th Sg「この愛に泳ぎ疲れても」両A面)1994.2.2

この曲は5分以上あります。歌詞は言葉数少ない表現ですが、飽きる事なく最後まで聴かせてくれます。そしてさりげないtrackですが、勝田さんのサックスなど、 奥の深い演奏が重要な位置を占めています。ZARDには、前述のアレンジャー、ミュージシャン以外にも、Additional GuitaristとしてDIMENSIONの増崎孝司さん、鈴木英俊さん等、 数多くの演奏が加わって成り立っています。誌面の都合で全員のお名前を表記出来なくて、大変申し訳ないですが、この場を借りて、お礼を申し上げます。

見つめていたいね

作詞:坂井泉水 作曲:栗林誠一郎 編曲:明石昌夫
(AL『TODAY IS ANOTHER DAY』収録)1996.7.8

最後を飾る曲は、「見つめていたいね」です。一通のファンレターがもとになって作られたこの作品は、今も光り続けています。 明石さんのtrackは、坂井さんが当時傾倒していた中期?後期ビートルズの世界観を間奏に織り込んで、しゃれた内容になっています。「ひとりが好き」というところにも書きましたが、 メロディと歌詞のマッチングは大事です。さらに、歌い手に合う曲かどうかで、多くの人を魅了するかどうかが決まるのではないでしょうか? 具体的には書きづらいので、皆さんの知っている有名アーティストで、ジャンルのまったく違う2組を思い浮かべてみて下さい。そしてそれぞれの代表曲を1曲選んで下さい。 ZARDだったら「負けないで」みたいな感じでよいです。Aさんの曲「B」、そしてCさんの曲「D」。では、それをシャッフルしてみて下さい。Aさんが歌う「D」、Cさんが歌う「B」。 どうでしょうか?この組み合わせで初めて世の中に出て、果たして多くの人を魅了出来たでしょうか? ZARDは、本当にZARDに相応しい曲に恵まれていたと感じます。