ライナーノーツ

瞳閉じて

作詞:坂井泉水 作曲:大野愛果 編曲:徳永暁人
(36th Sg)2003.7.9

2003年12月に音楽プロデューサー長戸大幸さんと坂井泉水さんと一緒に、大野愛果さんのデモのストックを数多く聴き合いました。その中にあった曲の1つです。 ちなみに、その時に聴いた他の大野さんのデモ数曲も、製品としてアルバム『止まっていた時計が今動き出した』『君とのDistance』に収録されています。 この様にZARDのプロジェクトは、ZARD用に作曲された曲を吟味するよりも、作曲家が自由に作ってきた曲を坂井さんが選ぶ方が多かったです。 仕上がりは前作の「明日を夢見て」と同様、1番はバラード、2番からはアップ・テンポというアレンジ(アレンジャーはdoaの徳永暁人さん)になっています。 間奏はSax(演奏はDIMENSIONの勝田一樹さん)ですが、シングルとしては久し振りの選択でした。ヒューマンだったり、切なかったり、華やかだったり(この曲はこれが近い)、 ギターとはまた違う味わいにしてくれます。最後サビで半音上に転調する事で、華やかさはより一層広がっていると思います。

明日を夢見て

作詞:坂井泉水 作曲:大野愛果 編曲:小林哲
(35th Sg)2003.4.9

この曲は、「名探偵コナン」のタイアップで2003年1月から流れていた音源と、4月に発売されたCDではアレンジが違います。 徳永さんがテレビ・サイズをミディアム・テンポで作成して、歌もMIXも無事終了し、テレビ・オンエア用の音源は2002年10月末には納品していました。 しかし、“もっとゆっくりと歌いたい”、と坂井さんから希望がありました。より良い内容を求めて、色々試した結果、 年明けに小林哲さんにアレンジを一からお願いする事になりました。trackが一旦完成した後も、バラードで歌うなら、もっとテンポも含めて枠組みのない、 自由な歌い回しになるだろう、という結論になりました。ただし、坂井さんの歌に合わせるのではなく、実際は先にtrackを作成するので、 小林さんにイントロから1番のサビの手前までは、それこそ1小節ごとにテンポを変えてもらいました。

風が通り抜ける街へ

作詞:坂井泉水 作曲:織田哲郎 編曲:徳永暁人
(21st Sg)1997.7.2

Barbierのtrack制作で坂井さんと共に色々趣向を凝らしてくれた徳永さんが、ZARD本体でもアップ・テンポの楽しいアレンジをしてくれました。 60年代リズム・パターンにハードなドラム音色。最後サビの手前は中期?後期ビートルズの遊び心のある仕掛け。 さらには村上恭太郎さんのビーチ・ボーイズを彷彿とさせるコーラス・ワークが聴けます。歌詞の世界は、ZARDのシングルには珍しく?無邪気でお茶目な乙女心を歌っています。 サビは軽快ですが、Bメロの“でも あなたのとなりで平気な顔をしているのはもう限界”“思ったことを すぐ口に出してしまう悪いくせを許して”等、坂井さんは簡単な言葉で、 心の揺れ動く様を鋭く的確に表現しています。ジャケットは、ひょっとしたらもっとも弾けたものの1つではないでしょうか?ちなみに、この写真の坂井さんのしている腕時計は、 SWATCHの97年当時の新作でした

I'm in love

作詞:坂井泉水 作曲:織田哲郎 編曲:池田大介
(AL『forever you』収録)1995.3.10

この曲の収録されたアルバム『forever you』がリリースされた1995年は、阪神・淡路大震災、オウム真理教のサリン事件等、暗いニュースが日本を駆け巡りました。 「I'm in love」の歌詞は、ヒーローが必要だ、と説いています。不安定な時代にメスを入れつつも、坂井さんはそれを、理論武装したプロテスト・ソングにしてしまわず、 必ず身近な出来事、日常の話に置き換え、手に取れる様に問題提起してくれます。しかも、制作したのは94年ですから、前述の様々な事件が起きる前です。 これは、いわゆるシンクロニシティー状態になったとも考えられます。あまり時代にぴったりだと、流行としてもてはやされ、最後は廃れていく危険性もある訳ですが、 ZARDは、時代に寄り添いながらも、決して迎合せずにいたから、存在し続けているのだと思います。大黒摩季さんと生沢佑一さんのコーラスが全編ワイルドに入っています。

君がいない(B-version)

作詞:坂井泉水 作曲:栗林誠一郎 編曲:明石昌夫
(7th Sg)1993.4.21

この曲は、もともと栗林誠一郎さん自身の3rdアルバム『You never know』(91年2月6日リリース)に収録されていました。タイトルは一緒ですが、ZARDで収録する際、 歌詞の内容は変えています。でも解釈によっては十分アンサー・ソングにも思えます。個人的には今回初めて“刺激というスパイスだって必要かもね”という所の奥深い所を理解して、 改めて感動しています。筆者は40を越えて、ようやく把握出来たわけで、ちょっと遅いですね(笑)。アレンジは当時のZARDのアレンジを数多く傑出した (まさにこういう表現が的確でしょう)明石昌夫さん。重めのドラムに軽快なピアノの刻みが心地良く組合わさっています。栗林さんのオリジナルも彼のアレンジですから、 興味のある方は、聴き比べてみて下さい。ちなみに、「君がいない」には、シングルと(B-version)と2つあります。坂井さんのより良い歌声の響きを考慮して、 アルバム収録の(B-version)では先行して発売したシングルとヴァージョンを変えて作成し、出来も良かったので採用されました。 違いをまだご存知ない方は、こちらも是非聴き比べて下さい。もし楽器が手元にあるならば、尚良いです。無事気付かれた皆さんは、あ!と驚くのではないでしょうか?

もう探さない

作詞:坂井泉水 作曲:織田哲郎 編曲:明石昌夫
(3rd Sg)1991.11.6

ZARDがまだ、どんよりした曇り空のイギリスの首都ロンドン風に傾倒して制作していた頃の作品です。 デビュー・シングル「Good-bye My Loneliness」や2枚目のシングル「不思議ね…」はメジャー・コードですが、 初期の2枚のアルバムにはマイナー・コードの曲が数多く収録されています。歌うなら、もっぱらアン・ルイス等の曲を得意としていた坂井さんに合う様に、 選曲していった結果だと思います。抜ける様な青い空のロックをやるようになったのは、4枚目のシングル「眠れない夜を抱いて」からでしょう。作曲は織田哲郎さん。 前年90年の「踊るポンポコリン」で一躍世の中に躍り出た印象かもしれませんが、長戸さんは70年代の終わり頃、まだ20歳そこそこの織田さんに出会い、曲を聴いて “絶対にヒット作曲家になれる”と確信したそうです。80年代にもTUBE等に名作を提供し、下地は十分ありました。 ZARDに歌われる事で、織田さんのメロディもすごく生かされたと思います。

promised you

作詞:坂井泉水 作曲:栗林誠一郎 編曲:Cybersound
(33rd Sg)2000.11.15

ZARDは、2000年以降、活動が一時期止まっていましたが、それは坂井さんの体調が優れなかった事と、2000年以降はR&BやHip Hopがメインになってきていて、 ZARDの得意とする8ビートのロックはあまり時代にマッチしていない感じがしたという事もあります。倉木麻衣さんのヒット曲を多く手掛けていたボストンのCybersoundにtrackを 頼んだのは、化学変化の期待感もありました。その期待に彼らは見事に応えてくれました。8ビートを基調としながら、16ビートを感じさせる手法は、 坂井さんの歌声に見事に当てはまりました。例えばハイハットは8ビートですが、キックやループは16ビートになっています。今聴くと、R&Bではなく、 あくまでZARDのビート感で作成されている事に、改めて気付かされます。そして、きめ細やかな音色が織りなす、美しい壁のtrackを聴いて、坂井さんは“白く煙った宇宙に みんな笑って生きてる”と歌っています。この言葉を持ってきた組み合わせこそ、「promised you」の最高の化学変化でしょう。

悲しいほど貴方が好き

作詞:坂井泉水 作曲:大野愛果 編曲:葉山たけし
(41st Sg)2006.3.8

大野愛果さんが、具体的なアーティスト用という事ではなく、1998年2月に作曲しました。切なくてとても良い曲ですが、なかなか使われる事なく、 結局ZARD用で進める事が決まったのは2004年のツアー終了後でした。ピアノ中心のロックのイメージで葉山たけしさんにアレンジを依頼しました。 当初はシンプルな8ビートのtrackで、テレビ用は1度これで納品しましたが、CD用を作るにあたり、イントロのピアノ・フレーズの部分を増やしてもらい、 全体のグルーブも16ビートを感じさせるものを追加してもらいました。ちなみに次のシングル「ハートに火をつけて」では、16ビート的なグルーヴに真っ向からチャレンジしています。 歌詞は、普遍的で子供にも分かる位の言葉ですが(坂井さんはアニメのタイアップの時に、簡単な言葉というのを意識していました)、 歌が独特の切なさを持ち、大人にも十分訴える内容になっています。

君がいたから(di mare version)
(セルフ・カヴァー)

作詞:坂井泉水 作曲:織田哲郎 編曲:葉山たけし

「君がいたから」は坂井さんが歌詞を提供し、FIELD OF VIEWのデビュー・シングルとして、1995年5月15日にリリースされました。 これはZARDのセルフカヴァー・ヴァージョンです。当時FIELD OF VIEWの担当だった筆者は、歌詞をもらった時に、哲学的で深いなあ、と驚いた記憶があり、 それは12年経った今読み返しても同じです。坂井さんは、90年代半ばにFIELD OF VIEW、DEEN、WANDS等男性バンドを中心に歌詞を提供していましたが、 彼女自身くよくよしない、どちらかと言えば、さばさばした性格だったので、もしかしたら書き易かったのかもしれません。 ZARDのこのTrack(ちなみにFIELD OF VIEWのテイクもアレンジャーは葉山さん)を聴くと、ループにアコースティック・ギターが絡み、 10年以上前に制作したとは思えない位今の時代にマッチしています。その為もあって、今回MIXだけ新たに作成しています(di mare version)。

止まっていた時計が今動き出した

作詞:坂井泉水 作曲:中村由利 編曲:徳永暁人
(AL『止まっていた時計が今動き出した』収録)2004.1.28

GARNET CROWのVocal兼作曲担当の中村由利さんが、唯一提供して下さった作品。もともとのデモはキーの範囲が広かった為、坂井さんの提案で、 trackを作る時にサビでキーの下がる転調をしています。でもBメロ最後のギターのメロディがフックになって、結果として曲のパワーもエネルギーも増大したと思います。 タイトルも秀逸でした。なので、この曲のタイトルが2004年1月28日にリリースされたアルバムのタイトルにもなりました。ZARDのアルバムとしては、 久し振りに未発表のオリジナル曲も数多く収録する事が出来て、まさに『止まっていた時計が今動き出した』という表現に相応しいアルバムになったと思います。 2004年はアルバムに引き続いて初の全国ツアー「What a beautiful moment of Tour」も行われ、“動き出した”感がありました。

さわやかな君の気持ち

作詞:坂井泉水 作曲・編曲:徳永暁人
(34th Sg)2002.5.22

タイトル通り、実に爽やかで清々しい曲に仕上がっています。前述した様に、20世紀末に登場したHip Hopがメジャー・シーンに現れ、チャートを席巻し、 16ビートが吹き荒れた時代がありました。その嵐も数年で落ち着きを取り戻しました。ただ、Hip Hopのグルーヴの貢献は、ブームを一過性の流行ものに終わらさずに、 音楽シーンに当たり前のものとして、根付かせた事です。そういう時代背景の中、徳永さんがtrackを作成しています。 16ビートを基調としながらも、ZARDらしいしっとりした雰囲気に溢れています。坂井さんは常に新しい事にチャレンジしたい人でした。 しかし一方でご自身のイメージというものを、とても客観的にみていたと思います。だからこそ、時代の波に飲み込まれる事なく、活動し続けられたのでしょう。

少女の頃に戻ったみたいに

作詞:坂井泉水 作曲:大野愛果 編曲:池田大介
(25th Sg「運命のルーレット廻して」c/w)1998.9.17

大野愛果さんが前述の「悲しいほど貴方が好き」のデモの1ヶ月前の1998年1月に作曲しています。ZARDに最初に提供して下さった作品です。 池田大介さんアレンジの雄大でヒューマンで切ないtrackは、坂井さんの感情をより一層引き出してくれています。さて歌詞なのですが、珍しく? 包容力のあるゆったりした雰囲気の男性が描かれています。ZARDの主人公のお相手に登場するのは、人生どこか不器用な少年ぽい感じを残した人物が多い様に思っていましたが、 この曲では、“少女の頃に戻ったみたいにやさしく 髪を撫でてくれる”わけですから。坂井さんは、“私の実体験というよりかは、坂井泉水に、色々な物語を歌わせている”、 という様な事を言ってました。この曲の持つメロディ、trackが、坂井さんに、ハッピーな“坂井泉水”を歌う動機を与えたのかもしれませんね。

世界はきっと未来の中
(di mare version)

作詞:坂井泉水 作曲:岩井勇一郎 
編曲:徳永暁人・古井弘人・シオジリケンジ
(29th Sg)1999.6.16

岩井勇一郎(三枝夕夏 IN db)さんの作曲で、1999年8月の船上ライヴの時はちょうど新作だった為、会場でもっとも盛り上がった印象がありました。 そして、2004年の全国ツアー“What a beautiful moment of Tour”でもこの曲の力強さは強烈で、CDに入っている大田紳一郎さんのコーラスも生でライヴで聴けて、 仕上がりも良かったです。そこで、我々スタッフはライヴ・ヴァージョンを収録しようかと思ったのですが、残念! 全国ツアーはメドレーの中の1曲だった為、フル・サイズが存在していませんでした。結局シングル盤ではなく、新たにMIX(di mare version)し直して収録しました。 この8年間でテイストは色々変わったという事に改めて気付きましたが、工夫次第で時代と寄り添い続ける事も可能だという事も分かりました。 この様に、良い曲は、永遠に歌い継がれていくものだと思います。

いつかは…

作詞・作曲:坂井泉水 編曲:明石昌夫
(AL『もう探さない』収録)1991.12.25

アルバムのラストは坂井泉水さん作曲の「いつかは…」です。まずコード進行がただ者ではありません。キーはCなのですが、Aメロ途中でDmに転調した錯覚を与えます。 しかしサビではE♭に転調し、戻ったAメロでキーもCに戻ります。さらに、普通に聴いていると(分析をするわけではないですから)、とてもスムーズに進行していきつつも、 どこか初めての道に迷い込んだ様な不安感と、食べ慣れない物を食べる緊張感が湧いてきて、でも聴き終わった時に、不思議な安堵感に満たされ、“もう一回聴いてみよう” となるタイプです。この曲のコードは確信犯なのか、たまたまなのかは、謎です。歌詞について言及しない訳にはいかないでしょう。この作品を書いたのは、91年でしたから、 16年も前の事ですし、たまたまこういう内容だったと思います。1番Aに衝撃的な1行がありますが、むしろ“忘れないで ずっと あなたの中に 生き続けるわ”を 胸に抱いていたいですね。

※ CDショップ店頭にて配布しておりますフライヤー掲載のライナーノーツ(一部抜粋)ですが、「promised you」本文中に表記の誤りがありました。 誤:「promiss you」→正:「promised you」 訂正させて頂きますとともに、慎んでお詫び申し上げます。